アネモネ


「な、亡くなられた?」


彼女が感情的に物を言う理由が其処にあった。

私がもう少し早くに訪れていれば、
彼女は長い間見る事が叶わなかった、姉の満面の笑みを目にする事ができただろう。

その悔しさが私に対する態度に如実に表れていた。

申し訳ない気持ちで涙が頬を伝う、

竹田に諌められても、
迷い悩み、不必要な時を要してしまった。



「早瀬さん、どうぞこちらへ」

一度大きな息を吐き、気を落ち着かせた彼女は、
私を屋敷の奥へと案内してくれた、

何度も廊下を曲がり通された一番奥の部屋、

「姉が生活していた部屋です、、」

小さな小窓一つしかない八畳の和室の片隅に、
透子が使っていたであろう折り畳まれた布団が一式
木製の衣紋掛けには、、
袖も通さぬ花嫁衣裳が、いつでも出番がきたら応えられるよう準備万端に飾られていた。

地袋の上の違い棚には、ガラスケースに入れられた白無垢の花嫁人形と、出征前に撮った私の軍服姿の白黒写真が置かれていた。

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