アネモネ
心労が人を老けさせる、、
暫く会わぬうちに、
髪も白くなり、母は小さくなっていた。
「母上、ご心配をお掛けしましたが辰哉は生きて戻ってまいりました、、」
「よくぞ、良くぞ無事で、、」
母はそれだけ言うと、
私の両腕にしがみつき、後は涙で言葉が継げない。
大切な人を二人も失った母にとっては、
どんな姿であれ、私が生きて帰る事は至上の喜びであったろう。
誰よりも一番我が身を案じてくれる母に、、
再び辛い別れを告げなければならない。
「母上、私は家には戻りません、後は妹達に任せます」
奇跡にも生きて帰った息子がまた遠くへ旅立つと言う。
「辰哉、当てはあるのか?」
「兵隊仲間を頼ってみます、ご心配なさらずに」
「透子さんはどうするか?」
「先ほど清吉さんにもお願いしましたが、私は戦死した事にして下さい。さすれば忘れる事も出来ましょう」
「あの子はお前と夫婦になることを望んでいる、本当にそれで良いのか? 何故行く前に子種を残さなんだ」
「、、生きて帰る事はないと思っておりましたゆ
え。 だから、、
せめて透子は綺麗なままで次の縁をと」