アンコール マリアージュ
「あー、うまかった。どうやって作ったんだ?これ」
「ええ?普通ですよ。醤油とみりん、にんにくと生姜にお肉を漬け込んで、片栗粉をまぶして揚げただけです。真さん、定食屋さんとかにも行った事ないんですか?」
「ああ。高校まで実家暮らしで、その後アメリカの大学と院に行って、そのまま会社の海外事業部でハワイとかフランスに行ってたから」

へえー、と真菜は頷く。

「じゃあ、日本は久しぶりなんですね」
「ああ。ちょっとコンビニに入ったら、もう、もの凄くって驚いた」
「あはは!もの凄かったですか?」
「そりゃもう。日本って凄いな」

コンビニで目を輝かせている真を想像して、真菜は笑いが止まらなくなる。

「おもしろーい、真さん。立派な方なのに、コンビニに感動するなんて。そう言えば、真さんって、今いくつなんですか?」
「29だ」
「ふーん…。ハワイとフランスの店舗にいらしたんですよね?えっと『プルメリア オアフ』と、フランスは確か…」
「シャトー・デ・ラ・セーヌ」
「そう!それ。『ボンジュール、ムッシュ…』なんだっけ?」
「は?シャトーだってば」
「そうそう」

真は、じとーっと疑わしい目で真菜を見る。

「さてはお前、アニヴェルセル・エトワールの全店舗、覚えてないな?」
「覚えてますよ、もちろん」
「じゃあ、言ってみろ」
「『フェリシア 横浜』でしょ?『ローズ みなとみらい』に…」

真菜が指折り数えながら答える。

「横浜エリアはいい。他は?」
「ほ、他?えーっと、『シエル 青山』『フォンテーヌ お台場』『リュリュ…』」
「リュミエール 代官山」
「そうそれ。あと『コリーヌ 幕張』『ネーネー…札幌』」
「ネーネー?!『ネージュ 札幌』だ」
「言いましたよ?ちゃんと」
「嘘つけ!言ってない。他は?」

真はまたしても鋭い視線を向ける。

「えー、『ソレイユ 沖縄』と…。あともう1つ神戸」
「そう、神戸は?」
「えっと、『マドモアゼル 神戸』」
「はあ?!『ベル・メール 神戸』だ」
「すごーい!真さん、コンプリート!」

パチパチ手を叩く真菜に、はあ…と、真はため息をつく。

「お前、新入社員でもスラスラ言えるぞ?ちゃんと覚えておけ。あと、意味もな。今度テストする」
「ええー?!テストなんて、やだ!」
「やだじゃない!覚えろ!」
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