乙女戦隊 月影 〜恥じらいの戦士〜
「きゃあ!」

吹っ飛んだ加奈子に、モロダシ・ダンの笑い声がこだまする。

「甘いわ!無用心すぎるぞ!」




「ああ…」

あたしは、そのやり取りを見ながら、

「よいこは読まないわ」

と、この小説の行く末に不安を覚えた。




「犯人に告げる!大人しく、人質を解放して、出てきなさい!」

お決まりの台詞をはく警察官が、拡声器を向けていた。

あたしは窓から、外を見ると、校舎の前には数台のパトカーと装甲車が止まっていた。

あたしが顔を出すと、

レポーターが叫んだ。

「人質は、無事のようです!」


「人質?」

あたしは、眉を寄せた。

「国家の犬どもが!」

窓から、下半身を突きだしたモロダシ・ダンに、こちらにカメラを向けていたマスコミが、騒然となる。

その模様は、お茶の間にダイレクトに映った。

赤ん坊のようなあれは、しばらくして…ネットで論議を醸し出す。

あれは、剃っていたのかと。

「は、犯人は、下半身を露出しながら、女子高生のそばにいます!」

後に、これも論争になる。

下半身丸出しの男がいるのに、平気な顔をしていたあたしは、どうなんだと!


「馬鹿な…やつらだ」

モロダシ・ダンは、窓から離れると、あたしと夏希の方を向いて、

「お前達を倒した後、わたしはズボンをはいて、裏口から脱走する」

モロダシ・ダンの尻から、何かの容器が飛び出してきた。

「そうすれば、誰かわかるまいて!そして、神の薬を使えば、ふさふさに!もう絶対にわかるまいて!」

楽しそうに、高笑いをするモロダシ・ダン。

しかし、次の瞬間、彼は凍りついた。

「忠司!お願い!もうやめて!」

拡声器から、聞こえてきたのは、女の声だった。

「なっ!」

絶句したモロダシ・ダンが、窓から下を覗くと、

拡声器を握り、涙を流す女性がいた。

「か、母さん…」

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