神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
園芸部の活動を終え、『八千代』と二人で学生寮に帰りながら。

「…俺達のどっぺるげんがーって、もう何処かにいるのかなー?」

と、『八千代』に話しかけてみた。

「どうだろう…。いてもおかしくはないよね」

だろーね。

自分と同じ顔をした、自分の偽物かぁ…。

気持ち悪いなぁ。

『アメノミコト』で、統領の影武者をうようよし見たけど…。

あれも気持ち悪かったもんなー。背格好も服装も一緒で、皆同じ顔をしてさぁ…。

あれは気持ち悪いよ。

やっぱり、自分なんてこの世に自分一人で充分だ。

「出てくるのはまー良いけどさ、悪さされたら困るよね」

「悪さ?」

「だってあいつら、俺達を押しのけて、自分がオリジナルに取って代わるのが目的なんでしょ?」

つまり、俺達の偽物が突然やって来て、「今日から俺がお前になるから、お前は消えろ」って言われてるようなもんでしょ?

それは嫌だよ。

「いつ出てきて、いつ何をするか分かったもんじゃないよ」

「確かに…。怖いね」

でしょ?

「どれだけ本物と同じ顔をしてたって、誰も、その人の代わりになることは出来ないのにね」

「…全くだよ」

頭領の影武者を見てみろ。

整形されて、脳みそをいじくられて、自分は本物の鬼頭夜陰(きとう よるかげ)であると思いこんでいたけど。

奴らは、所詮影武者。

簡単に使い捨てられる、いくらでも替えの利くお人形でしかなかった。

それと同じ。

いくらどっぺるげんがーとやらが、俺や『八千代』の真似をしたって。

それは俺じゃないし、『八千代』でもない。

どっぺるげんがーには多分、それが分からないのだ。

かわいそーにね。

「もしかしたら、僕のどっぺるげんがーが出てきて『八千歳』を騙すようなことがあるかもしれないけど」

と、『八千代』が言った。

「そのときは、騙されないでね」

「…何言ってんのさ、君は」

そういうのを愚問と言うのだ。

「そっちこそ、俺の偽物なんかに騙されないでよ?」

「うん。僕は絶対、『八千歳』だけは間違えないよ」

それは良かった。

もしどっぺるげんがーが現れたなら、きっと最初に…君に接触するだろうからね。

そのときは、すぐに偽物だと見抜いて、どっぺるげんがーを退治してもらいたいものだ。
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