神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
…更に。

「やーっ!」

「食らえーっ!!」

続けて突進してきた、第二陣にも。

一人は腹に膝を、もう一人は後頭部に踵落としを。

それぞれ食らわせてやると、両方白目を剥いて倒れた。

…軟弱千万。

「な、何だこの女…?」

「ば、化け物…」

「退避、一時退避だ!」

ほう、逃げますか。賢明な判断ですね。

…今、私に化け物って言ったの、誰です?

…まぁ良いでしょう。今の私は忙しいですからね。

「…敵の大将に会わせてもらいましょうか」

私は、トランプ兵を押し退け。

ダイヤの国の女王の前に立った。

「…何ですの?あなた…」

こちらを見て、訝しむダイヤの女王。

…それはこっちの台詞です。

「私はイレース・クローリア。訳あって現在、この国の女王の相談役を引き受けています」

「そ、相談役…?」

「私の身の上などどうでも良いのです。それよりも…今すぐ、この国からお引取りください」

私はダイヤの女王を睨みつけて、そう言った。

「何ですって…?」

「あの女王が上に立ってるんじゃ、侵略したいのは分かりますが…。後にしてください。今日のところは、自分の国に帰ってください」

私が、こんなにも穏便に頼んだというのに。

「…何を馬鹿なことを…」

鞍の上に座ったダイヤの女王は、私の訴えを一笑に付した。

「何処のどなたか知りまけんけど、私のやることに口を出される謂われはありません」

…成程。

その自信たっぷりな態度、少しくらいハートの女王に、爪の垢を煎じて飲ませて欲しいですが。

…私の忠告に耳を貸さないとは、この女王もまた名君とは程遠い。

愚かですね。

「そこを退きなさい。早く王都を攻め落としてしまいましょう」

「…今私に向かって、退けと言いました?」

「え?」

…ふざけたことを。

「退くべきは、あなたの方でしょう」

好き勝手言わせておけば、調子に乗って。

「宣戦布告もせず、他国に侵略する?亡命中の他国の民に槍を向ける?…あなた、国際法を知らないんですか?」

「こ、こくさい…?」

どうやら、知らないらしい。

そんなことも知らないで、戦争を仕掛けてきたと?

まるで、ジャマ王国のように礼儀知らずじゃないですか。

…断じて許さない。

「もう一度言います。…さっさと帰りなさい。今なら、これまでの狼藉は許してあげます」

「な、何を…」

「しかし私の忠告を聞かないなら…そのときは、もう容赦は、」

「…ふん。小娘が、うるさいですわ」

ダイヤの女王は、私の言葉を遮り。

「この小娘、さっさと始末してしまいなさい!」

女王は自分の兵に、そう指示した。

…そうですか。よく分かりました。

「…容赦はしないって、今言いましたよね?」

つまり…。

…そういうことです。






私の杖から、鋭い雷が迸った。



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