カラダダケの関係に依存していた私の話
この頃になると、不器用な父の言葉に隠された本意を簡単に見つけられるようになっていた。


本意は受け入れつつ、それを無理に隠す父は未だ受け入れられなかった。


こうして3月末、就職と同時に実家を出た。





実家を出てから親のありがたみが分かる、とは
よく言ったものだ。


何年もの間、この言葉が色あせず語り継がれているのは、多くの人が心の底から想ったからなのだろう。


逆を言えば、本当のありがたみは実家を出てからしか分からないのかもしれない。


私がそう思ったのは、実家を出て1ヶ月経とうとしている頃だった。


寂しい…。


ふとその感情が浮かんできては、何をしていても消えなかった。


考えてみれば今まで独りぼっちの時間なんてなかった。


父方の祖父母とも暮らし、専業主婦の母を持ち
同じ部屋には姉がいて。


心の面で支えてくれる病院の先生がいて。


学校に行けば友達と笑い合い、
さほど無い空き時間にはバイトに遊びにと明け暮れていた。


基本的に誰かが傍にいる状態で育ってきた私にとって、ほぼ一人暮らしのような寮生活は物足りない環境だと言うことに、ようやく気が付いた。


あんなに実家から出たくてたまらなかったのに…。


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