カラダダケの関係に依存していた私の話
「ユキだよ」


彼が私の名前を読めなかったのと同じように、私も彼の名前を読めなかった。


でも敢えて聞かない。


知ったところで呼ばない。


そうして、一定の距離を保つようにしていた。


のめり込まないために。


私の記憶に残る彼が、なるべく少しであるために。


後で思えば無駄な抵抗だったのだが。




「映画でも見ようか」


彼は適当に選んだであろう恋愛系の吹き替え洋画を流した。


薄暗くなる部屋。


「おいで」


彼に従ってベッドの上に座りながら、壁にもたれかかって映画を見た。


しばらくして不意に彼からのキス。


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