カラダダケの関係に依存していた私の話
行く場所も時間も食べるものも、タイミングだって全て彼に任せていた。


Nの行きたい場所に私も行きたくなるし、満腹でもなければ匂いを嗅げばお腹が減ってくる。


都合のいい女が言うセリフに聞こえるかもしれないが、それが私の本心だった。


分かっているNもいつからか私に意見を聞くことはなくなった。


心地よかった。


「特に決まってないけど、ちょっと歩こう」


今日のNは、いつもと違っていた。


普段の彼は目的を最後に置く人なのだ。


分かりやすく言うと、好きな食べ物は最後に食べる人。


行きたい場所があればそこに着くまでの寄り道も楽しみ、一日の最後に目的の場所を訪れる人。


そんな人があんなに好きなシリーズの映画を先に見たということは、それを超える何かがまだあるのだ。





映画館を出た私達は、大通りを避ける為の道すらも避け、人通りのない閑静な坂道を歩いていた。


「それで、話ってなに?」


話があるなんて言われていないのに、Nにそう問いかけた。


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