白杖くんは、恋を知った
「あたしたち、同い年なんだから敬語やめろよ」

「えっ、いいんですか?」

「何で同級生に気を使うんだよ」

「えっと、じゃあそうするよ」

何だろう、星来さんは今まで出会った人とは違うような気がする。僕は強く白杖を握り締めていた。

今までも星来さんみたいに困っていたり、危ない目に遭いそうになったら、助けてくれる人はいた。だけど、その時はみんな僕をどこか憐れんで見ていた。そうか、星来さんは僕を可哀想だと一ミリも思ってないんだ。だからこんなにも、心が今、軽いんだ。

「あの星来さん、よかったらこれ、お礼に……」

リュックサックの中から、僕はクッキーを取り出して渡す。どうしても星来さんに渡したいって思ったんだ。

「お礼って、そんなの別にいいよ」

「星来さんがいなかったら、僕はもしかしたら電車と接触していたり、ホームに転落してたかもしれないから、だからどうしても何かお礼をしたくて!」

僕がそう言うと、「そこまで言うなら」と星来さんは受け取ってくれた。それが、とても嬉しい。星来さんは僕に訊ねる。
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