38年前に別れた君に伝えたいこと
「自分に正直ね、、
別れた時も、圭ちゃんを嫌いになったわけじゃないでしょ? それがさっきの貴女の胸に聞いてって言った答えよ、、
だから彼は河崎さんの事は忘れても、貴女の事は38年も経っても忘れる事ができなかった、
貴女が、今も変わらずに彼が好きだから、、
彼もそれを信じていた、
彼に最初にあの小説を見せられた時、私はそれに気づいたの、
気づいたからこそ、、、貴女だけは絶対に会わせられないと思った、彼の揺れ動く心情が私には手に取るようにわかる、、私が邪魔さえしなければ彼の願いは成就したかもしれない、、私が許せない?」
「いえ、例えあの小説がそのままネットに出ても私が目にする事は無かったです、それに、もし読んでいたとしても私にも家庭がありますから、、」
本当に我慢できただろうか、、いや、きっと今より悩み苦しんだに違いない。
「生まれ変わっても、私はまた圭ちゃんと一緒になるからね、貴女には負けない」
私も次の人生では圭くんと幸せになりたい。
「・・私も、今度は圭くんを掴まえたら絶対に離しませんから」
予期していた回答に彼女はニッコリ微笑を返した。
「高瀬さん、今日は、わざわざ訪ねてくれて有難う。
彼もきっと喜んでいると思うわ。私も彼の望みを叶えてあげる事ができた、感謝してるの。」
席を立って、玄関に向おうとした時、
ふと、優しげな視線を感じて見上げると、鴨居の上に亡くなられた家族の遺影が飾られていた。
「お母さん?
お母さんも亡くなられたんですか?」
「えっ、高瀬さん、お義母さんを知ってるの?
でも、そうか私の前に付き合ってたんだものね」
「私は一度だけ、此処にお邪魔したことがあるんです。前の日に君嶋くんと電話で喧嘩して、電話を切られちゃったんです。その後一晩中泣きながら手紙を書いて、1日も早く彼に渡したくて家まで行こうって決めた。
駅から15分くらい歩いて、迷いながらもようやく彼の家にたどり着いて、手紙だけポストに入れて帰るつもりだったのに、
『家に何か用だったかしら?』
後ろから声を掛けられて、振り返ると母親らしき人が立っていた。