再会から始まる両片思い〜救命士の彼は彼女の心をつかまえたい〜
「はぁ。疲れたね」

「本当ですね」

結局救急車2台の受け入れと外来へ訪れたが10人を超えていた。
翌朝10時になりやっと仕事を上ることができた。
休憩もままならず、重い体を引きずるように着替えをすると近くのファミレスで朝ごはんを食べてから帰ろうとふたりで寄り道をした。

「のどかさん、何にします?」

うーん。
疲れたからさっぱりしたものが食べたいかも。でもお肉も少し食べたいなぁとメニューに目を落としていると隣のテーブルから声をかけられた。

「もしかして原島総合病院の看護師さん?」

男性ふたりがこちらを見て話しかけてきた。
見覚えのない人で紗衣ちゃんの顔を見るが彼女も知っている様子はない。
なんだか怖い、と正直に思ったのが顔に出てしまったらしい。

「あ、俺たちさっき救急車で搬送した救急隊員です。覚えてます? 交通外傷運びました」

「え、あぁ」

私は全く覚えていなかったが紗衣ちゃんはなんとなく覚えていたようでイエスともノートとも受け取れるような返事をしていた。
けれど話しかけてきた彼は気にする様子もなくさらに話しかけてくる。
患者のプライバシーは口外すべきではないのでこれ以上話されたら困る。けれどそれは彼らも同じ。守秘義務がある。

「覚えられてなくて残念です。でも俺たちちょうど話してたんですよ。ものすごく手際がいい看護師さんたちだったって」

「そんなこと……」

「いえ。本当に手際が良いし、送り出して安心して帰ってこれました」

ふたりは交互に褒めてくれるが、褒めすぎなのでは、と恥ずかしくなる。
この状況をどうしたらいいんだろう、と悩んでいるとさらに男性がひとり現れた。
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