再会から始まる両片思い〜救命士の彼は彼女の心をつかまえたい〜
食事が終わるといつもテレビの前のソファに座り、コーヒーを飲むのが日課。
お酒を飲むのももちろん好きだが、次の日のことを考えると飲まない日も多い。
そんな私たちはおしゃべりしつつドリップしたコーヒーを飲むのが楽しみになっていた。

「そういえば紗衣ちゃんからこの前お菓子もらったの」

私はバッグの中から北海道銘菓を取り出した。加藤くんとふたりで旅行に行ってきたお土産だ。

「俺も貰ったけど個包装のお菓子1個だったぞ」

「えー。本当?」

「あぁ。楽しかったと散々聞かされたが、土産はみんなで1箱だよ。あいつはそういうやつだ」

私も函館や札幌を回ってきたと紗衣ちゃんから楽しそうな話を聞いていた。2泊だけだったがとてもよかったと紗衣ちゃんは酔いしれていた。本当は海外に行きたかったが、2人とも長期でなかなか休みは取れず国内になったのだが、それでも十分すぎるくらい楽しかったと話していて羨ましくなった。
箱からお菓子を取り出すと彼にも一つ手渡した。
パクッと一口で食べてしまう豪快さはやはり男性だ。

「うん、美味い」

「本当だね。やっぱりこのお菓子は間違いないね」

ホワイトチョコの甘いお菓子がコーヒーによく合う。

「俺たちもどこかに行こうか」

よほど私は羨ましそうな顔をしていたのか彼はそう提案してきた。

「でも忙しいでしょ?」

もちろん一緒にどこかへ行きたいが、彼を困らせたくはない。

「俺がのどかをどこかに連れて行ってやりたいんだ」

そう言うと私の腰を引き寄せ、抱きしめてきた。

「分かれよ」

私は彼の腕の中で頷いた。

「嬉しい」

寒くなってきてからウインドサーフィンはお休み。そのため私たちはもっぱら都内のデートばかりしていた。行っても横浜くらいまで。だから紗衣ちゃんたちが北海道に行くと聞いてかなり羨ましかった。

「加藤たちのこと、いいなってちゃんと口にしないとダメだぞ。私も連れて行って、と言われ困るような男に見えるか?」

「ううん」

「お互い忙しいのはわかってるからつい気を回してしまうが、口に出さないとダメだって話しただろ? お互いに相談し合おう」

私が頷くと彼も頷いた。
そしてそのまま彼は私のシャツの中に手を滑り込ませ、身体をなぞり始めた。

「のどかが欲しい」

正直に口にする彼の色気を帯びた声に胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
小さく、うん、と返事を返すと彼は楽しそうに笑う。
触れ合うだけのキスはあっという間に終わり、彼の舌は私の口の中に入り込んできた。

「……んん」

私の息まで飲み込むように舌が口の中を探り回る。頭を押さえられガッチリと彼に捕まえられている。唇は角度を変え、その度に私の声が漏れ出てしまう。

「はぁ……ん」

口角からどちらのものかわからない液体が漏れ出てしまう。彼はそれをペロリと舐め上げると私を抱き上げた。

「行こう」

すでに脱力した私は彼の腕に身を委ね、ベッドへ運んでもらう。
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