もう、オレのものだから〜質実剛健な警察官は、彼女を手放さない〜


ーーー夢を、見ていた。


風邪を引いた小学生の私が、額に冷却シートを貼られてベッドに横になっている。

その傍らには、スーツに身を包んだ今よりも若い母。


『ごめんね、葉菜……。ママ、どうしてもお仕事に行かないといけなくなって……』

『ううん、大丈夫だよママ。お仕事忙しいの知ってるから。そんなにお熱も高くないし、これくらい、私全然大丈夫』

『なるべく早く帰ってくるからね。本当にごめんね』

『平気だって。ほらママ、遅刻しちゃうよ!いってらっしゃい!』


ああ、これは小学校四年生か五年生の時、私が熱を出した時の記憶だ。

心配そうに何度も振り返る母に、今よりも随分と小さくて幼い私が笑顔を向けている。

その笑顔は、今見ると何ともぎこちのないものだった。

だって本当は、全然平気なんかじゃなかったから。

出来ることなら、側にいて欲しかった。

でもママは仕事が忙しいし、そんなわがままは言ってはいけない。私はお姉ちゃんなんだから、しっかりしなきゃ。

あの頃の私は、子供ながらに精一杯強がっていた。

本当は、部屋を出ていく母に、言いたかった言葉がある。だけど、言えなかった言葉。

夢なら言っても良いだろうか、あの時グッと飲み込んだ言葉をーー。

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