もう、オレのものだから〜質実剛健な警察官は、彼女を手放さない〜
「── 風香、ありがとう。私、犬飼さんにメッセージ送ってみるよ」
「お!いいぞ、頑張れ!」
私の決意に小さくガッツポーズした風香。
そんな彼女に見守られながら、その勇気が萎む前にと着替え終わった私がバッグの中からいそいそとスマホを取り出せば、それはタイミング良く手の中でブルブルと震え出した。
「わわっ……!って、え⁉︎」
何と、そこに表示されていたのは今まさに連絡しようと思っていた彼の名で。しかも着信で。
それに驚いて危うく取り落としそうになるのを何とか堪えて「ど、どうしよう……!」と画面を風香に向ければ、「何てグッドタイミング!ほら葉菜!早く出て!」と急かされる。
私はこくこくと頷いてごくんと一つ唾を飲み込んでから、震える手で応答ボタンをタップした。
「もっ、もしもし!」
『── 葉菜先生?こんばんは、犬飼です。今電話、大丈夫ですか?』
初めて聞く、電話越しの犬飼さんの声。
直接聞くよりも少し低くて、でも柔らかくて、まるでその声に鼓膜を優しく撫でられているかのような錯覚に陥る。って、何を考えてるんだ私は……!
「はっ、はい!ちょうど今仕事終わって帰る所なので、大丈夫です!」
うっかりその声に聞き惚れてしまった自分を心の中で叱咤して、慌てて答える。
『そうなんですね。オレもちょうど帰る所で。……あ、じゃあ良かったらこれから飯、一緒に行きませんか?』
「ご飯……⁉︎」
スマホを耳に宛てる私の反対側にピッタリとくっついていた風香が、〝きゃー!〟と声にならない悲鳴を上げたけれど、むしろ悲鳴を上げたいのは私の方だった。