もう、オレのものだから〜質実剛健な警察官は、彼女を手放さない〜

「そういえばこの前貰ったつまみセット、ビールにもよく合って美味かった。改めてありがとう」


ビールで乾杯をして少しずつ解れていく緊張の中、焼き鳥を食べながら他愛のない話をしていれば犬飼さんが思い出したように言った。


「あ、いえ、こちらこそです!お気に召して頂けて良かったです」


あの日のお礼の品は、悩みに悩んでお菓子ではなくちょっと贅沢な缶詰のおつまみセットにしたのだけれど、喜んで貰えたなら良かった。


「特にうずらの卵缶と、牛すじ缶が美味かった。おかげで贅沢な晩酌ができた」
 
「……っふふっ……」

「どうした?」


真顔でそうしみじみと呟いた犬飼さんに、私の口から無意識に笑みが溢れてしまい、彼が不思議そうにこちらを見た。


「いえ、犬飼さん、何か可愛いなって……」

「……可愛い?」

「あ、すみませんっ、つい……!」


つい、ぽろっと口を突いて出てしまった……!

慌てて口を押さえるも、もう遅い。


「……オレのことを可愛いなんて言うのは、ハコ長と鶴崎さんと、葉菜先生くらいだ」


でも犬飼さんは特に気を悪くした風もなく、そう言って苦笑した。


……確かに、犬飼さんの中身をよく知らない人ならこの見た目だし、彼のことを可愛いなんてまず言わないだろうなぁ……。

ふふっ。

彼のことをよく知っているであろうハコ長さんや鶴崎さんと肩を並べることが出来て、何だか嬉しい。だって彼の可愛い部分を知れるってことは、前よりも少し犬飼さんに近づけているってことなんじゃないかと思うから。

なんて私が一人内心で喜んでいれば。


「まぁ、オレは葉菜先生の方が可愛いと思うが」


突然、隣から思いも寄らぬ爆弾が落とされた。


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