もう、オレのものだから〜質実剛健な警察官は、彼女を手放さない〜
「── え⁉︎」
「酔っ払って管巻くところとか」
「酔……っ⁉︎それは忘れてください……!」
か、揶揄われた……!
こちらを向いて、コン、と私のビールジョッキを軽く小突いた犬飼さんの表情は、どこか楽しそうに見えた。
そんな表情さえも可愛く見えてしまって、私は慌てて彼から目を逸らし小突かれたジョッキをグイッと煽る。
「── なら、管を巻かない家飲みで上書きしてもらわないと忘れられないな。ちょうどこの前鶴崎さんの実家から送られて来たっていう美味そうなつまみを貰ったし、今度上書きに来るか?」
「上書きって、……ん?え……?」
あまりにも自然に誘われ過ぎて、危うく聞き流す所だった。咄嗟にぐりん!と犬飼さんの方を向けば、柔く眦を下げた犬飼さんと目が合った。
「オレは安全、安心の象徴だと実証済みだろう?変に構える必要はない」
……そうだ。犬飼さんのその誘いに他意はない。
犬飼さんが安全、安心の象徴であることは前回確かに実証済み。
優しい彼は、きっと私に名誉挽回の機会を与えようとしてくれているんだ。
むしろ私にやましい気持ちがあるからこそ、こんなにも過敏になってしまうんだ。
「そうですよね……!じゃあ今度……」
いけない、いけない。私が犬飼さんへの下心を気取られないように平静を装いねぎまに齧り付けば、今度は彼の口角が何故かゆっくりと妖艶に持ち上がった。