もう、オレのものだから〜質実剛健な警察官は、彼女を手放さない〜
「── 続き、してもいいか?」
犬飼さんが私の上に覆い被さり、再び頬に添えた右手の親指でつうっ、と唇をなぞりながら、欲を孕んだ掠れ声で言う。
その声に、その仕草に、この状況に、羞恥心は募る。
「……あ、安全、安心の象徴は……⁉︎」
「言ったはずだが。〝次もオレが安全、安心の象徴でいられるかどうかの保証はしない〟と」
「……っ、」
そこではじめて、あの言葉が冗談ではなかったことを知る。
「……でも、葉菜先生がイヤなら止める。困らせたくはないし、嫌われたくもない」
強気できたと思ったら、急にしおらしくなる。
大型のシベリアンハスキーが、しゅん、と耳を垂れたのが見えた気がした。
果たして、たった今気持ちが通じ合った想い人からこんな可愛い表情とセリフを向けられて、断れる人がいるだろうか。いや、いないと思う……。
「……イヤじゃ、ないです……」
打って変わってピン!と耳が立ち上がり、目尻が甘く下がる。
それを可愛いと思う反面、私を閉じ込めるその瞳には、さらに熱が灯ったのが分かった。
でも忘れてはいけない。今の身体は、一日中子どもたちと遊び回ったあとの身体だ。いろいろと気になってしまう。
「あ、の……!でもその前にシャワー……!」
「もう待てない」
「……んっ」
可愛い大型犬は、あっという間に獰猛な大型犬へと姿を変える。
私のお願いも虚しく、犬飼さんの唇は再び私のそれを食む。まるで、その感触と私の反応を楽しむかのように。
でも、服の裾から侵入してきた熱を帯びる大きな手による愛撫に、次第にはくはくと息は上がっていき、シャワーを気にしている余裕などあっという間になくなってしまった。
吐息混じりの嬌声が甘やかに漏れて、咄嗟に両手で隠す。
「……隠すな。もっと聞きたい」
だけどそれは片手ですぐにシーツに縫い留められ、その唇や手は再び余す所なく時に優しく、時に意地悪に私を愛でていく。
その触れ方はまるで、犬飼さんそのものだった。
無防備になった唇からは私を翻弄するそれらに従順な甘い声が漏れ、衣擦れの音やリップ音に紛れて部屋の中へ散らばって溶ける。
その間にも身に纏っていたものが一つ、また一つと剥ぎ取られていくのに、それに羞恥を感じている暇さえ与えてくれない。