もう、オレのものだから〜質実剛健な警察官は、彼女を手放さない〜
そして満を持して十分過ぎるほどに潤った太腿の間にくぷ、と指を沈められて動かされてしまえば、甘いのに刺激的なその熱に侵食されて思考すら溶けてしまいそうになる。
でもこのまま溶けてしまう前に、私は犬飼さんに、伝えたいことがある。
「── …い、ぬかい、さん……っ、」
「……ん、なに?」
優しい眼差しで問い返してくるくせに、相変わらず私を翻弄している唇と指は意地悪で止まる気配がまるでない。
私が一際高く啼くところを探り当てて、シーツを蹴って逃げようとする私を執拗に追い込んでくる。
「── …あ……っ、……す、き、です……っ」
それでも嬌声の合間になんとかそれを滑り込ませれば、そこで犬飼さんの動きがピタリと止まった。
── 私も、ちゃんと言いたかった。
さっきは〝犬飼さんのせいで元彼のことが吹っ切れた〟、みたいな可愛げのない言い方しかできなかったから。
その言葉の裏はちゃんと汲み取ってもらえたからこその今なのだろうけれど、そこはきちんと伝えておきたかった。
だけど直後に指を抜き、甘い蜜に塗れたそれを妖艶に舐めとった彼の表情に息を呑む。
「……オレも好きだ。でも葉菜先生。悪いけど、今日は覚悟して」
それから自身の服を脱ぎ去り、両足を割って体を滑り込ませ、熱を押し当ててくる犬飼さんの〝男〟の表情とその熱の大きさを知って、〝今〟それを伝えてしまったことを私は少しだけ後悔する。
「── …いろいろと上書き、させてもらうから」
凄艶な色気を孕む掠れた低音が合図だった。
その瞬間、彼の大きな熱の塊が私の中にゆっくりと沈んで。
上書きにきたのは私のはずなのに、と浮かんだ言葉は、音になる前に瞬く間に散っていった。
私の中が彼でいっぱいになり、そのままぎゅ、と痛いくらいに抱きしめられて幸せが満ちる。
たまらなくなって私も彼の広くて逞しい背中に腕を回してしがみつけば、僅かに乱れた彼の吐息が耳元を掠める。
「…うごいても、いいか?」
辿々しいキスでそれに応えると、丸ごと食べられてしまいそうな深くて獰猛なキスが返ってきて、同時により一層質量を増したそれが緩やかに律動を始めた。
それから絶妙な緩急をつけたその動きに翻弄されるまま、私はただただ幸福と恍惚の波に呑み込まれるしかできなくなってしまうのだった── 。