もう、オレのものだから〜質実剛健な警察官は、彼女を手放さない〜



 


「葉菜。おいで」


それから数日後、私の早番と志貴くんの第一当番(日勤)が重なった日。

初めて二人で食事をしたあの焼き鳥屋さんで一緒に夕飯を食べたあと、彼の家に帰りお風呂から上がったところで志貴くんに呼ばれた。

平年よりも暖かかった今日、窓は少しだけ開いていて、心地よい風が閉められたカーテンをそよそよと揺らしていた。

呼ばれるがままにベッドに腰掛ける彼の元へ行けば、そのままぎゅう、と正面から抱きしめられて、ぐりぐりとお腹の辺りに顔を埋めてくる。


「ふふっ、どうしたの?」


くすぐったさに笑いながら、すっかり可愛い大型犬モードになっている彼の見た目よりも柔らかい髪を、私はわしゃわしゃと撫でた。


「……前科二犯」


ところがしばらくされるがままだった志貴くんが、私の腰に回している手はそのままに顔だけを上げて上目遣いでぽつりと不穏なワードを呟くから、私の動きはピタリと止まってしまった。


「へ?」

「葉菜の、痩せ我慢の〝大丈夫〟」


私の間抜けな一音の問いかけに返ってきた答え。

眇められた紫黒色の瞳に見つめられながらしばしその言葉の意味を考えて、ハッ!と思い当たる。


「── ……え、え、あの看病してもらった日以降、二回目あった⁉︎いつ……⁉︎」

「……あの花見の日。登録していない番号からの着信を見た時」

「……あ……」



『……出ないのか?』

『うん、〝大丈夫〟。登録してない番号からは出ないようにしてて』


大丈夫じゃなくても〝大丈夫〟と言ってしまうのは、もはや子供の頃からの癖のようなもので。

でもあの熱を出してしまった日、〝大丈夫〟と言った私が本当は大丈夫じゃなかったことを、志貴くんは見抜いてくれた。

お花見の時のあんな些細な〝大丈夫〟の中にも、あの日と同じように何かが滲んでしまっていたのだろうか。

志貴くんには私の〝大丈夫〟の裏に隠した気持ちなんて、お見通しらしい。


「……あの着信。知らない相手からではなかったんだろう?」

「……うん……」

「話してくれるのを待つつもりだったが、何かあってからじゃ遅い。だからちゃんと話して?」


私を優しく見つめる眼差しと優しい声色に促されて、それから私は志貴くんの隣に座って、数日前から続いていた元彼からの連絡のこと、お花見の日の夜に、もう会うつもりはないから連絡してこないで欲しいとショートメールを送ったこと、それ以来連絡がぱったりとなくなったこと、それら全てを話した。

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