もう、オレのものだから〜質実剛健な警察官は、彼女を手放さない〜






「……なんか、思ってた【一緒にお風呂】と違った……」

「よくなかった?」

「……よ、よくなくは、なかったけど……」

「ふ、それならよかった」

「でも、なんかこう一緒に湯船に浸かってゆっくりおしゃべりタイムとか……!」

「……次は善処する」

「その間がこわい……」


お風呂での事後、結局収まらなかった志貴くんにベッドでも愛でられ愛され尽くされて体力の大半を失った私は、そのベッドの中で志貴くんにゆるゆると抱きしめられている。

裸で触れ合う温度が心地良いけれど、熱が落ち着いたらこんなに明るくて健全な真っ昼間になんて不健全なことをしてしまったんだと、背徳感に悶えるしかない。


「待てが効かない犬は嫌か?」

「いや、じゃない……から困るの……!」

「はは……っ」


ぐりぐりと彼の胸におでこを擦り付けながらの私のやけくそな答えに、志貴くんがとても嬉しそうに笑ったのが耳からも密着した肌からも伝わった。


穏やかな陽光の差す昼下がり。

ゆったりと流れる時間。

すっかり慣れ親しんだ彼の香りと体温に包まれて、幸せに満たされる。


この幸せの始まりは、きっとあの日から。


「── 志貴くん。あの日、私を拾ってくれてありがとう」

「ああ。オレが拾えてよかったと、心から思っている。……だが、昨日葉菜を拾得物に例えてしまったことは反省している」


(まなじり)を下げてよかったと言ったあと、ちょっと困ったように続ける彼が可愛い。

まさかそこを気にしていたなんて、思ってもみなかった。


「ふふ、そうなの?私は嬉しかったのに。志貴くんのものって言ってもらえて」


志貴くんがその言葉の通り、私を〝もの〟として扱ったことなんて一度もないことくらい、わかってるよ?

いつも、とても大切に扱ってくれるから。

抱きしめられていただけの私も、彼の広くて逞しい背中に腕を回してぎゅ、と抱きついた。


昨日の出来事が、すでにすごく遠く感じる。

思えば、私を助けてくれるのはいつもこの人だった。

あの日も昨日も、いぬのおまわりさんは、私にとってのヒーローだ。

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