敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

「窮屈な思いをさせてごめん。でも、俺たちが一緒になるために、今は耐えるときだ」
「わかってる。ずっとここにこもっていれば、父や清十郎さんも私を捜しようがない。叶多くんが帰ってくるまでは、大人しくしているわ」
「……心配だな。美来はお転婆だから」
「もう、信用してよ」

 クスクス笑って、叶多くんの胸を軽く拳で叩く。けれど、途中でふと笑い声が途切れ、切なさが胸に押し寄せる。

 彼の胸に拳を置いたまま俯く私に気づいた叶多くんは、私の手を取って自分の頬に当て、温もりを確かめるように目を閉じた。

「必ず帰るから、待ってて」
「……うん。行ってらっしゃい」
「愛してる。世界で一番」

 瞼を開いた彼は愛おしそうな目をして、私の唇に最後の口づけを落とす。

 いつもより短いキスだったのは、これ以上名残惜しくならないようになのかもしれない。

 それでも彼の唇の甘さや感触を忘れまいと、私は目を閉じてジッと叶多くんを感じていた。

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