敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

 父や清十郎さんとの唯一の連絡手段であるスマホはバッグの中に入れたまま、見ることすらしなかった。

 もしも警察に相談されていたらと思うと不安だったけれど、娘が駆け落ちして行方不明などという事実は、一企業のトップである父にとってはあまり公にしたくないスキャンダル。

 おそらく大事にはしないだろうと叶多くんは予想していて、私もそれを信じることにした。


 そうしてあっという間に叶多くんが発つ日がやってきた。

 私は空港まで見送りに行きたかったけれど、居場所が特定される危険が増すからと、叶多くんが断固反対。寂しいけれど、玄関での静かな見送りだ。

「俺が帰国するまで、美来は絶対にここを出ないこと。買い物ならネットで済ませるか――」
「コンシェルジュに頼む、でしょ? もう聞き飽きたわ」

 切なさを振り切るように、明るく笑ってみせる。しかし『聞き飽きた』と言う言葉の半分は冗談でなかった。

 彼がスペインでの赴任を終えて帰国し、そばでちゃんと私を守れるようになるまでは、とにかく外出禁止。

 それが、昨日から何十回と言い聞かされた、私がここでひとりで暮らす上のルールなのだ。

 その他に、藤間家・八束家の人間と連絡を取ることも禁止。もちろん、家政婦も含めてだ。

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