敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
「まさか、泉美さんにもひどいことを?」
「人聞きの悪いことを言わないでもらえるか? 彼女は自ら進んで俺の手足となっているんだ」
「泉美さんが? そんなはずないわ。彼女はいつだって私の味方で……」
「だったら〝これ〟をお前の部屋から拝借したのは誰だろうな?」
清十郎さんが懐に手を入れ、スッと取り出したのは、赤い背表紙のパスポート。
言葉を失う私に顔写真のページを見せつけて、それが間違いなく私のものであると示した。
「誰って、あなたが勝手に取ったんじゃないんですか?」
「パソコンは覗いた覚えがあるが、パスポートは俺が取ったんじゃない。俺が、彼女に頼んだんだ。美来が二度とスペインに渡れないよう、パスポートを奪えと」
「嘘……」
清十郎さんが指示したというのは真実味があるが、彼の言いなりになってパスポートを持ちだしたのが泉美さんだとはどうしても信じられない。
「使用人との仲良しごっこに酔っていたのはお前だけということだ。彼女は今頃、空港に城後叶多を迎えに行っている」
「えっ?」
泉美さんが空港へ? どうして……。