敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
有無を言わさぬ瞳に睨まれて、ぐっと手首を掴まれる。そのままタクシーの方へ私を引っ張っていく彼に、必死で抵抗した。
「離して……っ」
「騒いだって無駄だ。俺とお前は許嫁同士。ただの喧嘩だと説明すれば、誰もお前を助けてはくれない」
「私をどこへ連れて行くつもりですか……?」
「どこって、お前の嫁ぐ家に決まっている」
淡々と告げた彼はタクシーの後部座席に無理やり私を押し込み、自分はその隣に座った。
「浅草の紫陽花楼まで」
彼が運転手に告げた行き先は、実家の旅館。
得体のしれない場所に拉致されるわけではないとわかってほんの少し気が緩むものの、彼の目的がわからず警戒心は解けない。
「これから私、スペインから帰国する彼を空港まで迎えに行くところだったんです。私がいないとわかれば、彼はあなたの仕業だってすぐに気づきます。だから、こんなことをしても無駄です」
「なにを言ってる。城後叶多が今日帰国すると知っているからこそ、俺はお前を迎えにきたんだ。ようやくふたりで……いや、腹の子と三人で幸せになれるとでも思っていたか?」
清十郎さんの冷ややかな流し目に、ぞくりと肌が粟立つ。
どうして彼がお腹の子のことを知っているの?
私の妊娠を知っているのは、自分以外ではただひとり。家政婦の泉美さんだけなのに――。