敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

 つまり、トーレス氏のレストランはホテル計画全体の目玉だったわけか。それが潰れたことで、事業は白紙。

 父も八束さんも嘘をついていないのだとしたら、寝耳に水の話だっただろう。すべてが明らかになったわけではないが、今回得られた情報だけでも有益だ。

「忙しいのに悪かったな。連絡は明日でもよかったのに」
《有能な兄貴を持ったせいで、さんざん辛酸を舐めてきたからね。今回の件を早く片付けて、兄貴にも父さんにも実力を見せつけてやろうと思ったんだ》
「隆多……」

 小さな頃から『兄貴、兄貴』と俺を慕ってくれた、かわいい弟の本音は少し意外だった。

 兄としては、なんでも要領よくこなし人の懐に入り込むのがうまい隆多の方が、俺よりよっぽど生きるのが上手だと感じていたのに。

「そんなことしなくたって、お前が優秀なことは俺も父さんたちもよくわかってるぞ?」
《どうかな。父さん、兄貴の前では『城後都市開発を継いでほしかった』って嘆いてるかもしれないけど、俺には誇らしそうに話すんだ。『叶多は社長室に収まる器じゃなかった。外交官として存分に世界を見てきてほしい』って》
「……初耳だな」

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