敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

「私たちのことと、美来様たちのことは関係ない。誰かを恨むのはもうやめましょう? たったひとりでも気丈に頑張っている美来様を見ていて思ったの。紫陽花楼を追い出されることになったあのとき、もっと精一杯抗っておけばよかったって。そうしたら、あなたをこんなに苦しめずに済んだのに」
「泉美……」

 初めて見る、清十郎さんの迷子のような瞳。彼はきっと、泉美さんにだけは弱さを晒せるのだ。

「ふたりに、ちゃんと謝りましょう? そして今度こそ、運命の波に一緒に抗うの。美来様たちみたいに」

 泣き笑いを浮かべた泉美さんに促され、怯えたように揺れる清十郎さんの瞳が、私と叶多くんを一度ずつ映す。

 それから紫陽花楼の若旦那らしく、美しい所作で床に膝をつき、床に額がつくほど頭を下げた。

「……すまなかった。俺にはふたりの姿があまりに眩しく、嫉妬していた」

「私も、すみませんでした……。城後さんに事情を話して助けを求めたとはいえ、何度も美来様を裏切る行動を取っていました」

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