敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

 旅館の外までふたりに見送られ、ようやく叶多くんとふたりきりになる。

 張り詰めていた緊張は解けたが、今度は別の意味でドキドキし始めていたら、頭上でゴホンと叶多くんの咳払いが聞こえた。

「ところで美来。俺は大事な話を聞いていないぞ」
「えっ?」
「さっき彼が『子供を授かった』と言っていただろう。内心動揺したが口を挟める空気ではなくて聞きそびれてしまった。……本当なのか?」

 想定外の緊急事態に陥っていたから、なにより先に報告しなければいけないことをすっかり忘れていた。叶多くんは期待に満ちた目をキラキラさせて、私の返事を待っている。

 私は微笑んで、まだ平べったいお腹に手をあてた。

「うん。本当です。今、妊娠十週。スペインでできた子みたい」
「そうか……ありがとう、美来。体、大事にしないとな」

 優しく目を細めた彼が私の髪にそっと触れ、慈しむように撫でる。

 それだけの仕草で私の胸を熱くさせるのは、やっぱり叶多くんだけだ。

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