敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

 意外な理由に目を見張る。だから叶多くんはシェフに話を聞きに……?

 まだ事情が呑み込めないながらもスマホに注目し、スペイン語で挨拶を交わす彼らを見ていた。

『八年前、スペイン初の日系ホテルの中にあなたのレストランを開業する計画があったと思いますが、なぜ断ったんですか? 契約金が理由だと言う情報もありますが』
『契約金? ……確かにオファーのあった地元ホテルの方がわずかに契約金は高額でしたが、断ったのはそれが理由ではありません』
『というと?』
『きわめて個人的な理由なのですが、八束の名には苦い思い出があって……日系ホテルの中に開業することに魅力も感じていましたが、最終的には私は、八束と関わることから逃げたんです』

 トーレスさんが。濃く長い睫毛を伏せる。彼の話は、それから彼の修業時代に遡った。

 当時彼の勤めていたレストランに同じく修行中の日本人女性がいて、同じ志を持つ者どうし励まし合っているうちに、恋仲になったのだそうだ。

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