敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

 今日は七月一日だが、宿泊予定日として表示されているのは七月二日。

 ひとり旅なので、手配をしたのは自分だ。うっかりして予約日を間違えたらしい。

 空いている部屋があれば泊まりたいとフロントで頼み込んでみたが、夏の行楽シーズンが到来したこともありすべて満室だと、けんもほろろに断られてしまった。

 このままでは宿なしになってしまう。

 どこでもいいから、空いているホテルを探さなければ……。

 気を取り直し、日陰を出て歩き出した。

 夏のマドリードはかなり日差しが強いので、緩くウエーブした茶色のロングヘアに、つばの広いストローハットをかぶっている。

 それでも、オフショルダーのワンピースから覗いた肩には、じりじりと灼けるような感覚を覚える。

 まさか荷物を持ったままホテル探しに繰り出すとは思っていなかったから、足元は歩きやすさよりお洒落を重視した厚底の編み込みサンダル。

 リゾートファッションで楽しく観光するつもりが、出鼻を挫かれてしまった。

 憂鬱な気分になると同時に、今回旅に出た理由である不本意な政略結婚のことが嫌でも頭に浮かんだ。

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