敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
「綺麗……」
「日本にいたら見られない景色だよな。街の中まで行ってみよう」
「うん」
当然のように手を繋ぎ、旧市街へ続くエスカレーターへ。石畳の上を歩いて広場に出ると、ショップやカフェが立ち並んでいた。その一角に、珍しい店を見つけてつい足を止める。
「ねえ、ここ……何屋さん?」
「ああ、武器屋だな。トレドは昔から武具の製造が盛んだったから」
「武器屋! なんだかファンタジーの世界みたいね」
思わず店頭のディスプレイに見入ってしまう。柄や鞘に施された繊細な細工、そして銀色に光る刀身そのものも、工芸品のように美しい。
「中世に実在した剣のレプリカなんかも売っているらしい。中に入ってみる?」
「ええ、せっかくだから、ぜひ」
足を踏み入れた店内には剣だけでなく銃器や盾もあり、武器マニアと言うわけではなくてもテンションが上がる。
外国の冒険物語を読み漁っていた子どもの頃なら、もっと興奮していただろう。
「ねえ、どれかひとつでいいから、トレドの思い出に買ってもいいかしら?」
「絶対に後で〝いらなかった〟ってなるぞ」
なんとなく予想はしていたけれど、苦笑いで武器の購入を止められてしまいがっくり肩を落とす。