敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
叶多くんは丁寧に名刺まで渡し、挨拶をする。受け取った清十郎さんは、興味があるのかないのかわからない無表情で、名刺に視線を落とした。
「在スペイン日本国大使館職員……ということは、常にこちらに勤務を?」
「はい。こちらでの任期はあと二カ月弱なので、九月から日本に戻りますが」
「なるほど……」
ふたりのやり取りをハラハラしながら見守っていると、叶多くんが私を背にかばうようにして一歩前に出る。
「単刀直入に言います。美来さんとの結婚を、考え直していただきたい」
清十郎さんが、無言で名刺から視線を上げる。ふたりの視線が交錯すると同時に、叶多くんがさらに畳みかけた。
「私は彼女を愛しています。そして、彼女も私を。ですから藤間さん、あなたとの政略結婚を認めるわけにはいきません」
私への想いをためらいなく口にする叶多くんに、胸が熱くなる。しかし清十郎さんがどんな返答をするのかも不安で、私はごくりと喉を鳴らした。