敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
「もちろん。美来が政略結婚を嫌がっているのはわかっていましたが、これまで彼女に男性の影はなかったし、両家の繁栄のためと思って、結婚は致し方ないと思っていました。しかし、本当に心を寄せる相手ができたのなら話は別です」
清十郎さんが、ふ、と寂しげに笑って目を伏せる。
「政略結婚を、取りやめてもよいと?」
「ええ。決まった相手がいないのならまだしも、他の男性を好いている女性を娶るなど、残酷なことはできません。男としてのプライドも、少なからず傷つきますしね」
冗談めかしてはいたが、後半は清十郎さんの本音に聞こえた。他の男に心奪われている私を妻にすることは、プライドの高い彼にとって確かに許しがたいことだろう。
政略結婚のメリットと天秤にかけても、つり合いが取れなかったのかもしれない。
「美来、どう思う?」
叶多くんは未だ清十郎さんを信用しきれていないようで、険しい顔をしている。
確かに、安易に信用してはいけない相手だとは思う。けれど、清十郎さんのプライドの高さを鑑みて、彼が嘘を言っているようにも思えなかった。
決して性格がよいとは言えない清十郎さんだからこそ、今回の言い分は信じてもいいと思えたのだ。