敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

「私、彼を信じて日本に帰る。そして、父のことも説得する」
「……俺は、そばにいてやれないんだぞ?」
「大丈夫。叶多くんは心配性すぎるよ」

 そう言って微笑むと、叶多くんも渋々と言った感じに頷く。私たちのやり取りを見ていた清十郎さんは、腕時計に視線を走らせた。

「帰りの飛行機まではあと一時間ある。航空券はふたりぶん俺が持っているが、ひとりでカフェにでも入っているから、別れの挨拶が終わったら連絡して」
「……わかりました」

 行き交う人の波に紛れていく清十郎さんの背中を見送り、改めて叶多くんと向き合う。

 目が合った瞬間ガバッと抱き寄せられて、耳のそばで震える彼の声を聞いた。

「必ず、迎えに行くから」
「うん、待ってる」

 二カ月なんてあっという間だ……。強く自分に言い聞かせ、涙をこらえる。

「愛してる」
「私だっ――」

 私だって愛してる、そう言おうとしたのに、熱い唇に口をふさがれて声を奪われた。

 公衆の面前で恥ずかしいと思うよりも、キスから伝わる叶多くんの想いを受け止めたい気持ちの方が勝っていた。
 
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