貴女は悪役令嬢ですよね? ─彼女が微笑んだら─
「大体、こんな感じかな。
 本当にド定番だね?」

シャルルは可笑しそうに笑っているが。
俺は笑えない。
確かに、オリジナリティも捻りもない、ド定番な悪役令嬢の所業だ。

こんなバカみたいな噂を信じるやつが居るのか?
それが噂として広まっている、その事も問題だ。
だが、今はそれよりも。
優先すべきは婚約者のクロエで……


「殿下!」

ほら、来た!
今日は王城で王太子妃教育のある日で。
クロエ・グランマルニエ・ラ・モンテール侯爵令嬢が来てるんだよ。
講義の後は俺との語らいの茶席が用意されている。


「殿下! リシャールっ!」


物凄い勢いで。
クロエがこっちへやって来る!
右腕をぐるんぐるん振り回しているよ!
それを見たシャルルとアンドレが俺から離れようとする。


「一発殴ったら、それで気が済むんですから」

素早く立ち上がり、後退りし始めた俺に。
先に立っていた癖にシャルルが言う。
俺の護衛の筈のアンドレなのに、この場から逃げようとするのは何故だ。


「素直に殴られてください」

アンドレ、その言葉忘れんぞ!
王太子殿下の弟と護衛だぞ?
怒れる婚約者から身を挺して、俺を護る気概は無いのか?
< 3 / 72 >

この作品をシェア

pagetop