貴女は悪役令嬢ですよね? ─彼女が微笑んだら─
兄上の婚約者のクロエ嬢がこの場に居ないのを確認して、話を続けた。


「彼女の耳にも入っているの?」

「口には出されませんが、恐らく……」

嫌だなぁ、僕に聞かせないで欲しかったな。
僕達兄弟にはその名称『悪役令嬢』は、禁句なのにさ……


「つまり……誰もあの女の嘘を信じていないのに噂だけは広まっているんだね?
 留守の兄上はともかく、僕にも聞かせないように噂されていたのに、どうしてドムは僕に言ったの?」

ついつい恨みっぽく言ってしまう。
ドミニクが腹黒なのは、所謂幼馴染みだから知っていたけれど、年下の僕には優しかったのに。


「王太子殿下のお帰りは週末でしょう?
 恒例のモンテール侯爵令嬢とのお茶の前に、殿下のお耳に入れておいていただけないかと」

「今、流れている噂については、どうするの?」

「どうもこうも。
 誰も信じていない話です。
 ビグローが被害者面しているだけですからね。
 皆はそれを面白がって、相手にしているだけ」
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