戻ってきたんだ…(短編)
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冷たい風が頬を撫でる。
昼間なのにも関わらず、若干吐く息が白くなる。
もう冬はすぐそこだ。
私は首に巻いたマフラーを巻きなおすと、
横にいる小さい手をぎゅっと握った。
すると、弱いながらも
精一杯握り返す手に
思わず笑みがこぼれる。
「パパ、遅いねぇ」
小さい影に声をかけると、
それはこくりと頷いた。
「寒くない?」
上着にマフラーに帽子と、もこもこになった我が子に問いかけると
コクコクと頷きながら「だいじょーぶ」と答える。
そんな微笑ましいやり取りに、
私は幸せだなぁと実感する。
翔との不思議な出会いから
もう7年の時が流れた。
あの日も、こんな肌寒い冬が近付いている季節だったな、なんて毎年思い出す。
ずっと、彼のことを忘れた日は一度もない。
でも、あの日を境に彼のことで泣くこともなくなった。
あの出来事のおかげで、
私は今愛する人と結婚し、
こうして可愛い子どもにも恵まれている。