悪役令嬢に転生した元絵師は、異世界でもマイペースを崩さない
「なんでこんな裏ルート作ったのよ、滋子ったら」

「そんな裏ルートで悪かったわね。そもそもあんたが調子こいて、ついでの設定を盛りに盛ったからこうなったんでしょうが」

この声、この発言は、滋子!

キヨノは懐かしくなり、咄嗟に俯いていた顔を上げると、目の前の赤い髪をした悪役顔のアシゲールを見つめた。

本当のことを知りたくなくて使えなかった真実の眼。

今なら···とその目を使って見つめると、それは間違いなく、前世の渡瀬滋子、その人であった。

「滋子、(その傲慢さ)滋子だったんだね」

「いつまでたっても近寄ってこないから、真実の眼の力を失ってるか、前世の記憶をなくしてるのかのどちらかだろうと思って、私から話しかけるのは遠慮してたのよ。ヒロムやリオン、チヒロが近づいた時も頑なに避けようとしたでしょ?あんたらしくもない」

キヨノが、滋子の後方に立つ面々を見ると、王太子であるヒロムをはじめ、チヒロとリオンも大きく頷いていた。

「似ているだけの別人だって確信を持つのが怖かった。こんなにソックリなのに。赤の他人として扱われるくらいなら関わらずに過ごした方がましだと思ったの」

断罪ももちろん怖かった。

だけど、それ以上に大事な人に関わろうとして存在を無視されるのが怖かったのだ。

いつの間にか、周囲の生徒はダンス練習を始めていた。

キヨノの周りには、王太子とその取り巻きである、滋子ことアシゲール、チヒロ、リオンしかいなくなっていた。

チヒロによって、盗聴防止の結界が張られているらしく、周囲には自分たちの声は漏れていないようだ。

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