悪役令嬢に転生した元絵師は、異世界でもマイペースを崩さない
「滋子は···ヒロムさんはナナミンの正体に気づいていたの?」

「ああ、平民の少女が七色の光魔法を使い始めたと聞いた時から、怪しいと思って彼女に影をつけていた。表ルートでたまに現れる虹は希望の象徴だが、裏ルートでの消えない虹は呪いの闇魔法だ」

ヒロムの答えにキヨノは思わず目を瞠った。

「取り巻き連中は、既にナナミンの魅了と魔王の洗脳黒魔術に蝕まれている。いや、この国の国民ほぼ全員が闇落ちしていると言っても過言ではない」

そんな中で、王子とその取り巻き連中、そしてキヨノに魔王の虹の呪いが効かない理由。

それは、潜在的にも魔王の存在を知る者、いわゆる前世のゲームの知識のある者には、洗脳系の魔王の魔術は効かないのだという。

そして、ヒロインナナミンの魅了を回避するのに必要なアイテムの存在。

「キヨノが身につけているその左耳のピアス。それはチヒロの加護の魔力を練り込んだものよ。それを入学式の日に、あんたのご両親からキヨノに渡すように頼んでおいたの。対魅了のお守り」

「えっ、これちぃちゃんが作ってくれたお守りなの?両親に外すなとは言われてたけどただのアクセサリーだと思ってた」

「その呼び方、懐かしいな」

滋子によると、ここにいるメンバー全員の前世の記憶が戻ったのも、不思議と消えない虹が空に架かったあの日なのだという。

「あの虹は幸せの象徴なんかじゃない。魔王が開放された場所から放たれた、洗脳の魔術の痕跡だったんだ」

今も西の空に架かる消えない虹は、たしかに不思議な色合いをしている。

地球の虹とは違い、赤、青、黄色、緑ピンク、白に加えて黒が混ざっているのだ。

「断罪によって各属性の魔法使いが一人ずつ処罰されると、引きずられる様にして同じ属性の魔法使いが死ぬんだ。だから、断罪するのは各属性の代表者一人ずつでいい。そうやって全属性の魔法使いを断罪したとき人間は消え、この世界は滅亡する」

自分達以外は誰も存在しない世界。

そんなものの何が楽しいというのだろうか。

「キヨノは魔王の正体を聞かされているか?」

先程まで、ヒロインナナミンの正体にさえ気づかなかったキヨノだ。

魔王の正体を知るはずもなく、キヨノは小さく首を振った。

「魔法学科の担任の顔を、キヨノの真実の眼で見てみろ」

キヨノはリオンに言われた通りに、魔法学科の担任の方に顔を向けた。

「!!」

「わかったか?」

コクコクと首を立てに振るキヨノ。

これで全てが合点がいった。

魔法学科の担任、いや、魔王の正体は、村瀬映二。

ここにいる5人が前世で潰した悪の根源。

前世の滋子と千紘の実の父であった。

< 8 / 15 >

この作品をシェア

pagetop