Rhapsody in Love 〜二人の休日〜


でも、さっきの〝お願い〟は、みのりの心にいつもある〝真理〟のようなものだった。


常に遼太郎を自由でいさせてあげること。


それは、12歳も年が上の自分が遼太郎の恋人でいるための、絶対に必要な条件だと思っていた。

だから、さっきの〝お願い〟を否定するようなことは言えない。
だけど、みのりはこの沈黙に耐えられなくなった。


「……遼ちゃん?」


暗い車内にみのりの声が、ひっそりと響く。遼太郎からはため息のような息遣いが聞こえて、


「……はい」


と、返事があった。

たったそれだけのことに、みのりは胸をホッと撫で下ろす。声の響きの感じでは、遼太郎は怒っているのではないみたいだった。


不安のあまり名前を呼んだだけだったけれど、呼び掛けてしまったからには、何か話題を出さなければならない。


「あのね……、あの、さっき言ってた愛ちゃんのことだけど」


「ああ…、はい」


「愛ちゃんに、うちのお寺のお守りを渡してもらおうと思ってるの。……俊次くんから」


「……いいですね」


返答は肯定的なのに、みのりはその中に遼太郎の心がないことを気取ってしまって、言葉をなくす。
それでも、何とかこの澱んだ空気を会話をすることで流し去ってしまいたかった。


「……愛ちゃん、勉強が忙しいけど、OB会に来てくれるかなぁ?来てくれたら、その時渡せると思うんだけど」


辛うじてつなげたみのりの言葉に、遼太郎は何も反応しなかった。
胸がドキドキと不穏に鼓動を打つ。みのりはもう何も言い出すこともできなくなって、唇を噛んで黙り込んだ。


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