Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
もう道もつづら折りではなくなったのに、さっきみたいに遼太郎は手を握ってくれない。ただ前を見て運転する遼太郎の横顔にさえ、みのりは視線を向けられなくなってしまった。
暗い車内は重苦しい沈黙が漂い、時間が恐ろしいくらいゆっくりと流れていった。
芳野の街に帰ってきた頃、遼太郎が突然言葉を投げかけた。
「……先生?疲れてますよね?」
窓の外の街の灯を眺めていたみのりは、不意を突かれてハッと息を呑んだ。
「ううん。運転も遼ちゃんがしてくれたし、ジビエは疲労回復に効果があるんだろうね。大丈夫、疲れてないよ」
「……そうですか……」
みのりは敢えて明るく答えたのに、遼太郎は短く相づちを打っただけで、また黙りこくってしまった。
遼太郎が何を思い、何を考えているのか分からなくて、みのりは不安を通り越して悲しくなってくる。
今日の夜もずっと二人きりなのに、こんな雰囲気では楽しく過ごすことは難しそうだ。
——一晩中、このままの状態なんて……。
遼太郎と一緒にいられる貴重な時間なのに、こんな沈んだ空気のまま……という状況だけは、どうにかして回避したかった。
理由を訊く勇気のないみのりは、懸命に原因を考えた。なにが遼太郎をこんな状態にしているのか……。
疲れている……そう思いたかったが、どう考えても、先ほどの自分がした〝お願い〟しか思い当たらない。