Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
蒸らすこと数十秒、それからコーヒーの膨らみを保ちながら、焦らず細くお湯を注いでいく。その手法を、遼太郎はみのりの肩越しにじっと観察した。
遼太郎のやり方とほとんど変わらないのに、みのりが淹れると説明ができない何かが、でも歴然と味に違いが出てくる。それが遼太郎にとっては、まるで魔法にかけられているようで、不思議としか言いようがなかった。
「今日のコーヒーはきっと、特別に美味しいと思うな」
コーヒーがドリッパーから落ちてくるのを待ちながら、みのりが口を開いた。
遼太郎がその意味を問うように、みのりを覗き込んだ。
「だって、遼ちゃんと一緒に淹れたコーヒーだから。遼ちゃんと私の想いが注がれた史上最大級に美味しいコーヒーになってるよ」
「俺は何にもしてないですけど、俺の想いが注がれてるんなら、……なんか不味くなってそうです」
「どうして?」
みのりが大きな目をくるりとさせて、遼太郎を見つめ返した。
「……だって、俺の想いはめっちゃ濃いから、ドロドロになってそうで」
「あはは…!」
思わず笑ってしまったみのりの意識が、自分の手元に向かなくなる。コーヒーサーバーが傾いて中身が零れそうになった瞬間、遼太郎の手がみのりの手を包み込むように握った。