Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
俊次はみのりを心配しつつも、部活の方へ戻っていた。二俣は走って練習の輪の方へ行き、そこから俊次を連れ出して来てくれた。
「みのりちゃん!大丈夫だった?」
二俣よりも先に走って来た俊次は、開口一番にみのりの様子を訊いた。普段なら『何の用だよ?』と言う大きな態度も、すっかり鳴りを潜めている。
「いちおう、大丈夫ということだったけど、これから先生を家まで送っていくから」
遼太郎が説明すると、俊次は大丈夫ということよりも別のことに気を留めた。
「ええ?なんで兄ちゃんが?!」
自分の兄とみのりが特別に親しいなんて、露ほども思っていない俊次にとっては、当然の疑問だった。
「先生にボールぶつけたのお前じゃないか。弟の尻拭いしてやってるんだろ?」
あの事故を俊次だけのせいにするのは、少し気の毒な気もしたが、遼太郎は苦し紛れにそう言い訳した。
「それよりも、俊次くんに折り入って頼みたいことがあるんだけど」
「……なんだよ?」
みのりが本題に話を戻すと、俊次はチラリと遼太郎の反応を窺いつつみのりに向き直る。
「ちょっと、こっち来て」
みのりが遼太郎からバッグを受け取り、遼太郎と二俣に背を向けて、少し離れたところへ俊次を連れて行く。
俊次はなんとなく特別感と優越感を伴って、背後に並んで立つ遼太郎と二俣の様子を振り返って確かめた。