Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
シャワーの水音が聞こえ始めて、「ううっ…」という遼太郎のうめき声が聞こえてきた。
「……遼ちゃん?どうかした?大丈夫?」
着替えながら、浴室に向かって問いかける。
「大丈夫です。試合の時の傷が滲みただけですから」
水音の合間にそんな答えが返ってくる。
——そう言えば、ほっぺたに擦り傷ができてたよね。
みのりはセーターの襟口から頭を出すと、本棚にある救急箱を取り出した。ローテーブルの上にそれを置くと、落ち着かなげに側に座る。
いつもは一人で過ごすこの部屋。
遼太郎と遠く離れ離れでいるときには、想いが通じ合ったのなんて、自分が勝手に思い描いた妄想なんじゃないかとさえ思うことさえある。
つい先日も遼太郎がここに来て、甘い時間を過ごしたことも、夢だったんじゃないかと錯覚してしまうくらい、みのりにとっては幸せな出来事だった。
みのりはシャワーの水音に耳を澄ませて、その遼太郎が今まさにここにいてくれていることを噛み締めた。
そして、今は二人っきりで他には誰もいない。
みのりの心臓がドキドキと鼓動を打ち始める。どうしようもなく嬉しいのに、却って焦りにも似た感覚に突き上げられる。居ても立っても居られなくなって、何かをして紛らわせたくなる。
思わず立ち上がってしまったみのりは、やっぱりコーヒーでも淹れて気持ちを落ち着けようと思った。