Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
その矢先、浴室のドアが開いて、濡れ髪の遼太郎が出てきた。
居間の中で立ち尽くすみのりは遼太郎と対面し……、
「あ…!」
軽く声をあげて固まった。
腰にタオルを巻いただけの姿の遼太郎。
みのりは思わず唾を飲んで、遼太郎の体に見入ってしまう。明るい場所で改めて見るそれは、美術館で鑑賞する彫刻のように、本当に美しかった。
みのりの反応を見て、遼太郎は自分が恥ずかしくなって赤面する。
「…す、すみません。手元に着替えがなかったから……。すぐに着ます」
と、片手で腰のタオルを押さえながら、もう片方でリュックサックに入れていた着替えを取り出しにかかる。
「あ!着なくていいから!」
「……え?!」
とっさに投げかけられたみのりの言葉に、遼太郎は動きを止めて、みのりを凝視する。
見つめられて、みのりは自分の言葉の意味を反芻する。そして、棒立ちになって顔を真っ赤に塗り替えた。
「…いや、そういう意味じゃなくて!…って、そういう意味って、そんなこと考えてたわけじゃなくて!!…いや、だから…っ」
みのりの口からは焦りのあまり、思ってもいない意味のない言葉が飛び出してくる。
遼太郎は思わずフッと笑いを漏らす。
「……先生。落ち着いてください」
一生懸命言い繕っているみのりが可愛くて、このままずっと見ていたいと思ったけれど、さすがにそういうわけにいかなくて言葉をかけた。