悪役令嬢にそんなチートな能力を与えてはいけません!
 ジュリアン様の腕の中で朝を迎えた。
 寝ている間に、ジュリアン様が私の家に連絡を入れてくれたみたいなんだけど、私がジュリアン様の部屋に泊まったのが周知の事実になってしまった。
 恥ずかしくて、家族にどんな顔を見せていいのか、わからない。
 でも、そんな心配も杞憂だった。
 そもそも、家に帰してもらえなかった。帰ろうとすると、ジュリアン様が悲しそうな顔をするから帰れなかったのだ。
 仕方なく、その週末は、ずっとジュリアン様とイチャイチャと過ごした。

 驚いたことに、ジュリアン様の寝室に繋がる部屋に、私の部屋が用意されていて、ドレスやアクセサリー、下着まで完備されていた。

 「どうせ、君はまもなくここに住むのだから、用意は早い方がいいでしょ?」とジュリアン様は微笑む。

「あ、僕の趣味で揃えてしまったから、ルビーの好みにどんどん変えていいからね」

 ジュリアン様はそう言ってくれるけど、その部屋は完全に私好みに設えられていて、変えたいところなんてなにひとつなかった。

 

 週明けは王宮から一緒に通学する。
 周りの生温かい目が居たたまれない。

 そして、今日も地震があった。

「早急に手を打たないとね」 

 ジュリアン様は、よろめいた私を支えながらつぶやいた。

「ジュリアン様、ルビアナ様、おはようございます」
「おはよう」
「おはよう、セシル」

 背後から声がして、振り返るとにこやかなセシルだった。
 昨日まで後ろめたかったけど、今日は憂いなく微笑める。
 あとでセシルに直接話を聞いてみようと思っていたら、彼女がススッと寄ってきて、ささやいた。
 
「いつもに増して、お二人の仲がよろしいんじゃないですか? あとでじっくり聞かせてくださいね」

 からかい混じりの言葉に、かあっと頬が熱くなった。
 セシルがくすくす笑った。

 大事な友達の邪魔になっていなくて、本当によかった。
 その笑顔を見て、心から思った。




 さすがに、家に帰してもらえた平日。
 授業が終わって、ようやく週末だとほっとしていると、ジュリアン様が私の席に来られた。
 彼は私と一緒にいたセシルに目を向けると言った。

「セシル、週末の買い出しはルビーとじゃなくてフランと行ってくれる?」

 この週末はセシルと文化祭の買い出しに行く約束をしていた。
 セシルは頷くと、極上の笑みを浮かべてフランを見た。

「し、しかし……」

 セシルの満面の笑みを向けられて赤くなりながらも、なにも聞かされていなかったらしいフランは難色を示す。

「僕はルビーと部屋に籠っているから護衛は必要ないよ。ルビーの代わりに行ってくれる?」
「そういうことであれば……」

 フランが了承した。
 
(へ、部屋に籠る?)

 色気のあるまなざしでジュリアン様が流し見るから、こないだのことを思い出して、一気に体が熱くなる。
 真っ赤になった私に、ジュリアン様が囁く。

「セシルの恋を応援しないといけないでしょ?」
「……そうですね」

 小さくうなずくと、陽だまりのような笑顔でジュリアン様が私を見つめた。
 アクアマリンの瞳が私を囚える。
 こんなジュリアン様に勝てるはずがない。


 その週末、私がジュリアン様とイチャイチャしている間に、セシルは押して押して押しまくって、見事に恋を成就させた。

 愛を得たセシルは強力で、祈りを捧げると、それ以降、地震が起きることもなくなり、冷夏も解消して、いつもの暑い夏がやってきた。
 
(さすが聖女だわ……)

 ゲームの世界のように、セシルは国を救って、甘いトゥルーエンドを迎える。
 スチルのように微笑み合う相手は、もちろんフランだった。

 長年悩んでいたことがあっという間に解決して、私は唖然とした。

 私の恋人も親友もいろんな意味ですごい……。




「ルビー」

 まばゆい人が私を呼ぶ。
 振り向くとジュリアン様が私を見ていた。

 春のような穏やかな人かと思ったら、真夏のギラギラ太陽にもなって、そして、誰よりも私を愛してくれている人。
 その彼が()()()()()()私を見つめる。 

「ジュリアン様」

 私はもうあなたをあきらめなくていいのね?
 ずっと二人でいられるのね?

 もう、あの力はいらない。

 私は愛しい恋人に微笑んだ。




―fin―


 

 

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