眠り姫と生贄と命の天秤

禁じられている植物

 キトエが立ち止まって、意識が引き戻された。荒野のなかでは葉のついた木が密集している場所で、夜を越すために当たりをつけていたところに着いたのだった。

「あ、うん。いいよ。火、おこしちゃうね」

 リコは体に斜めにかけていた革袋を、砂っぽい地面に置く。本当はキトエはリコに荷物を持たせたくないらしいのだが、そうは言っても食材を買い足したときなどはリコもちゃんと持っている。それとは別に、腰に吊るした革袋には、水、少しの食料、お金などを入れていた。

 落ちている葉や枝を集めて盛り、左手を近付ける。指先に意識を集中させるが、魔力は限りなく抑える。指に、淡く赤い枝葉の模様が浮かび上がる。

「イグニト」

 指先に現れた炎を、葉に灯して燃え上がらせた。

 火をつけるときは、いつも少し緊張する。魔力を抑えられないと大惨事になってしまうからだ。

 利き手ではない左手のほうが魔力は低くなる。とはいえ魔力を抑えなければこのあたりが焼けるほどの威力になってしまう。火打ち石も持っているのだが、物資は節約するに越したことはないので、リコの魔法でまかなえるぶんは魔法を使うことにしていた。

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