斜め前の遠藤君。
「め、迷惑だった?」
「いや、すごく助かるけど、ほんとにいいの?」
「もちろん! だってわたしも助かるもんっ」

 前のめりに頷くと遠藤君は歯を見せて笑った。いつも遠巻きに見ていた遠藤君の笑顔に、わたしの心臓がドキッと跳ねた。

「じゃあさ、とっておきの場所あるからそこで食おうよ」

 渡すだけって思ってたから、ものすごくびっくりした。頷いてついていったけど、せっかく一緒にいるのに歩いてる間なにも話せない。

「あ、なんかの飲み物買ってく? お礼にそれはおごらせてよ」

 遠藤君が廊下の途中で立ち止まった。自販機には学生にうれしい格安パックジュースが並んでいる。

「じゃあ、わたしウーロン茶」
「マジでか。俺苦くて飲めんヤツ」
「遠藤君って意外とお子様舌なんだね」
「ていうかパンとウーロンの組み合わせは認めない」
「えー、口がさっぱりして合うと思うのに」

 なんだか普通に会話してなくない? 遠くから見てるだけだったのが、ただのクラスメイトから会話する普通の友達に昇格だ!
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