Will you marry me? 〜エリート建築士は策士な旦那様でした〜
「どうしてそこまでしてくれるんですか?」
「ん? それはまた追々? 菜々は俺のことを信じろよ」
はぐらされたような気がするが、彼の表情からはふざけているようにも見えない。
しかしそれは、父たちの前や、ネットに映っていた写真のような冷たい表情でもない。
まっすぐな吸い込まれそうな瞳に映る私は、自分でも初めて見るような顔をしていた。
「迷惑をかけてはいないですか?」
「俺のことを心配するなんて菜々は優しいな。父上やあの妹にもっと怒ってもいいんだぞ。それにこんな得体のしれない男の元に嫁がされて」
「得体のしれないって自分で言うんですか?」
少しふざけた様にいう謙太郎さんに、クスっと笑ってしまう。
「菜々は笑っていた方がかわいい」
「なにを……!」
甘すぎる言葉に、もはやキャパオーバーだ。
「大丈夫、俺は血統書付きだし、優良物件だから」
最後まで和まそうとしてくれているのか、あっさりと私の心をつかんでしまった彼。
とうとう声を出して私は笑っていた。こんなことはもう何年振りかもしれない。