「あのさ、リュウくん」



「ん?」



「来年の結婚式、神前にすればよかったかなぁ」



「どしたの、急に」



「だって私たちクリスチャンじゃないのに、当たり前のように教会をさがしてウェディングドレスを試着して、って準備してたでしょ」



彼がチラッとこちらを見た。



「でも今日、ひめゆりの塔とか島に行っていろいろ見てね、…日本人のあり方というと大げさかもしれないけど、日本の伝統って大事だなぁって思ったの」



彼が「うーん」とも「ふぅん」ともつかないような返事をして、運転席の背もたれにドサッともたれた。



どうやら、完全に渋滞にはまっているようだ。



時刻は19時半。



日本全国の主要道路が混雑する時間帯だ、無理もない。



彼はハンドルからも手を離して、腕組みをした姿勢で黙りこくった。



彼の横顔を見ると、どこか遠くを見るような眼差しをしていた。






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